精子提供までの流れ

もし興味をお持ちいただけた場合、フォームからお問い合わせください。以下のように段階を追って提供まで進めていきたいと思います。

お問い合わせ

「お問い合わせ」フォームか記載しているアドレスないしtwitterからお気軽にご連絡ください。活動の趣旨に合う限り、どのような事情でも相談いただければと思います。提供者の人間性についてもっと詳しく知りたい、といった希望もあるかと思います。よってご質問には可能な限りで回答いたしますし、真摯なメール交換や希望に応じてのZoom, Skypeなどでの通話には何往復でもお付き合いいたします。

ご面談

ご相談ののち、直接お会いできる運びとなった場合、日時と場所を設定した上で面談を実施したいと思います。人物確認や信頼関係のために一回は面談はあった方がよいと考えています。ZoomやSkypeでももちろん良いのですが遠隔通話のみだと精子提供に限らず互いの印象が中途半端になりあまり生産的でなく感じます。基本的にはやり取りがあった後に提供前に一度は対面がある方がより望ましいという考えです。とはいえあくまで個人的な希望ですから事前にご相談があれば面談省略といった希望にも対応したいと思います。

ご提供

提供をご希望いただいた場合、お互いに一番便利な方法で連絡を取り合っていければと思います。提供の場所と日時を決めましょう。ご懐妊にいたるまでのスケジュールを相談しつつ、精子を提供したいと思います。事前に連絡をいただいた上で、当日の提供も可能です。相談者様の意思が優先しますので、どの段階でもあってもお考えが変わった場合には提供辞退されて問題ありません。基本的には互いに匿名が安心かと思いますが、これまでの経験から提供に至る場合は既にある程度信頼関係が構築できていますから、相談者様からの希望があれば互いに本名を開示する形式の提供も一つの選択肢です。

提供方法・面談などについて

面談について

基本的には顔合わせした上で、教えていただいた情報やお互いの人物確認をする程度ものと位置付けています。時間については特に制限を設けず、休日に喫茶店やご自宅近くでざっくばらんにこちらのことをお話ししたり、事情にあれこれ耳を傾けて信頼関係を作っていくような形式が多いです。初対面の男とはいえ、大抵の場合相談していただく方より年下ですし、いちおうは常識的に社会生活をしている人間なのであまり懸念されることもないと思います。実際プロフィール通りで普通の人間ですから概ね信頼していただけるようで、かなりの事情をお話しになることもあります。むろん雑談で終わることもあります。

いずれにせよ判断材料を提供するのが主な目的ですのでこちらから積極的な働きかけはしません。相談される方に主体的に判断して頂きたいと思っています。基本的にはお互い匿名とするのが安全と思いますが、互いに実名で臨むのであれば筋に従って私自身についての証明書類などもお見せできます。ケースバイケースで適切な距離感を保っていきましょう。

事前にご相談があれば面談当日でも精子提供は可能です。 また、提供者との面談は個人的には有用と考えていますが世界的には必ずしも一般的ではないことから、ご希望によって面談は省略可能といたします。

方法について

可能な範囲でご希望に応じた方法を使って対応いたします。ご相談ください。 基本的には簡易で十分な成功率を見込めるシリンジ法か人工授精・体外受精のための病院持ち込みとなるかと思います。病院持ち込みの場合で指定の容器がある場合はご持参ください。 タイミング法は成功率の上ではたしかにメリットがあるものの、相当の信頼関係がない限り適切ではないと考えています。いずれの方法を選択するにしても、(特に梅毒・HIV・B/C型肝炎が母子感染した場合の)お子様への影響も考えて事前になんらかの性病検査を受けることを推奨します。

シリンジ法について

シリンジ法は世界的に普及している方法です。簡便で身体的な負担が少ないからです。適切に排卵日を把握していれば30代後半の方でも早期に結果が得られることもあったので、個人的にも有力な手法だと考えています。

海外では10㎖の大きさが一般的なようです。少し大きめかもしれませんが、取り回しがよいのでこちらでも10㎖を基本としています。採血用でも10㎖が多いのには訳があるのでしょう。

実際には5㎖、1㎖のサイズもありますから面談を行う場合にはお見せしてお体に合うものを選んで頂くことも可能です。 採精容器につても同様に滅菌済のカップを用意しております。便利のため、たいていはあらかじめ吸引してシリンジに入った状態のものをお渡ししています。もちろんご自分でご用意いただいてもよいと思います。それ程高価な器具ではないので、通販などで滅菌済みのものを購入されると良いと思います。

2022年現在のところ、シリンジ法の場合には10㎖でお渡しして問題があったという報告は受けていません。またこの方法で懐妊に至ったという連絡も複数ありましたので、今のところは10㎖を基本として必要があれば適宜調節していこうと考えています。

費用について

郊外への交通費などある程度実費が生じる場合にはできる限りでお願いしております。遠方からいらっしゃって交通費がかなりかさむ方の場合は、お気持ちだけで構いません。日本の交通機関が高額すぎることも踏まえて阿漕なことはいいません。 その他こちらに生じる負担についても、経済的に難しい場合はあえて口にして要求するようなことはありません。容器代は一回当たり駄菓子程度のものなので負担とは考えていません。それほどうるさいことは申しませんので、普通の人付き合いの延長としてなんとなくお互いが納得できような配慮が働いていれば問題ないかと思います。 謝礼は不要です。あくまで無償のボランティアとなります。

提供地域について

現在は首都圏を生活の拠点としています。東京23区内が活動の中心ですので、関東圏の方であれば非常にアクセスは良いと思います。職業柄いつでも自由に移動できる訳ではなく一般的な東京の通勤圏外への出張提供は少し難しいですが、以前からの方針として場所や時間は相談の上極力柔軟に対応したいと考えています。同様に地域で必要とする方の資源となることを基本として、遠方であっても来訪される意思がある方には対応するやり方に変わりはありません。

提供期間について

シリンジ法の成功率は20代で25%を超えない程度が正常です。30歳を過ぎるとどうしても成功率は下がってきてしまうようです。一回でうれしい結果となるか、一年近く根気強く試行する必要があるのかだれにもわかりません。妊娠のしやすさは個人差が大きくやってみないと分からない部分が大きいので、健康状態から十分見込みがあるようなら年齢はそこまで重視せず希望がある限り極力協力いたします。

人工授精や体外受精の成功率は自然な方法に比べて有意に高いので35歳以上の方であれば考慮する価値がありますし、首都圏という場所柄医療機関は豊富にありますから年齢的に自然な妊娠には不利であっても具体的な不妊治療の計画のある方には長期間の協力をし易いです。

また、相談・提供中のいずれの段階においても、自由に辞退いただいて構いません。相談者様の意思を尊重いたします。辞退時には連絡があると先の予定が立てやすいので助かりますが、連絡が数か月以上ない場合は辞退する意思があるとこちらから忖度したい思います。こちらから相談者様の意思について問い合わせることは原則いたしません。

お問い合わせ頂く際に

やり取りはお互いをよく知らない状態から始まります。その後希望に応じて出自を知る権利に応えどの程度まで互いの身元を教えあうことができるかはどこまでの信頼関係を築くことができるかによります。そしてメールやSNSの文面、Zoomなど遠隔通話で聞いた声はお会いするまではのお互いを知るためのほとんど唯一の経路です。極力善意で捉えてメールの往復や通話には応えるよう努めておりますが、言葉遣いから意思疎通が難しいと判断される場合やなんらかの悪意が感じられる場合には応えづらくなることもあり得ます。どのような首尾になるにしても、お互いの気持ちを損ねない配慮をしていければと思います。

提供時について

月に一回のチャンスですので、基礎体温表を作成するなどしてある程度排卵日を正確に把握しておくことをお勧めします。排卵日当日に拘られる方がいますが、精子は子宮内で12時間ほど待機しないと受精できません(受精能獲得といいます)。一方で卵子は排卵後6時間ほどすると受精能力が大きく低下します。この関係上、排卵当日のトライではタイミングが合えば妊娠率も高いですが、精子が受精能を獲得する前に既に卵子が死んでしまっている可能性も高いです。

精子は2~3日は卵管内で元気で1週間は生きていますので、排卵日の1~2日前が総合的に見て一番妊娠可能性の高いタイミングとなります。ブログの「生理周期と妊娠に至りやすい時期」にも詳しく書きましたが、理論上は排卵の5日前から可能性がありますので、排卵日の予測が難しい場合にはやや早めの提供がより妊娠の可能性を高めるでしょう。

シリンジ法で実践される場合、提供時間の直前に採精してお渡しいたします。当初は粘り気がありますが30分ほどすると液化するので、そこから遅くとも2時間以内には処置をしてください。射精後3時間を過ぎた精子は運動性が有意に悪化します。焦る必要はないですが、3時間という意識は必要かもしれません。

また精子は細胞ですので、あまり高温や低温、直射日光に晒すと弱ってしまいます。下のグラフ(Aは縦軸が運動性、横軸が時間です。Bは縦軸がDNAの損傷度、横軸が時間です。)にあるように、室温が最適です(Asian J Androl. 2010 Sep; 12(5): 753–759. )。人肌ではすぐに弱って損傷してしまいます。特に低温が苦手なので冬はタオルに包んでカバンの中に入れるといった工夫をお願いいたします。夏も熱くならない工夫が必要です。カイロなどは熱すぎ精子は死滅してしまいます。自然に優しく扱う程度で大丈夫です。

処置時には、楽にして横になった状態で枕を敷くなどして腰を高くした状態にすると良いようです。処置後の液漏れ(精子そのものは速やかに子宮内に移動するので、空の液です。心配はいりません。)に備えてタオルを敷いておくと手間取らずに済みます。次に子宮口を探し当ててください。丸くて滑らかな感触です。大体鼻先ぐらいの硬さの組織です。探し当てたら、指をガイドにしてシリンジを子宮口の中心に向け、精液を注入してください。注入後は15分から30分位腰を高く保つのが一般的に推奨されているようです。精子が子宮内に移動する短時間の間に漏れがないようにする工夫が重要になってくるでしょう。

提供後について

よい結果を祈っております。スムーズに1,2回で成功できればこれ以上のことはありません。確かに個人的な経験としてはそういった幸運な事例はいくつかありましたが、実際のところ人間にとって身籠るというのは簡単なことではありません。依頼者様の年齢や体調、生殖にかかわるなんらかの既往などにどうしても左右される部分があり、単に受精すればよい、というものではないからです。ブログの「一回ごとの成功率について」をご覧ください。ですので、多くの場合何回か粘り強く試す必要性があるかと思います。ひと月ごとにお互いの予定を早めにすり合わせていくためにも一回ごとの成否はぜひご報告いただければと思います。

2023年現在で実際に提供し始めて4年半ほどになりますが、結果に結びついているのはやはりエコーや排卵検査薬を組み合わせて排卵を予測した上で適切な頻度で連絡を取り合ってきた人です。ヒトのような複雑な生物の生殖はどうしてもシビアです。ヒト以外の霊長類も平均50年ほどの生涯のなかで4頭前後の子孫しか持たないのが普通のようなので(AMERICAN JOURNAL OF PHYSICAL ANTHROPOLOGY 000:000–000 (2011)(DOI 10.1002))、できるだけ早い挙児を希望であればセクシャルなこととして感傷的な気持ちを持つのではなく淡々と排卵を予測しながらタイミングを合わせていく努力が必要でしょう。産婦人科でのエコーと排卵検査薬を組み合わせるのが基本的な方法と考えています。ある程度きちんと予測で来ていれば、これまでの経験的には30代後半までの方は平均半年前後で妊娠に至っています。以下に2023年にシリンジ法の6周期目で成功した方のエコーを掲載しておきます。

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2023年に懐妊した方:妊娠ごく初期のエコー

提供期間については、35歳以下の年齢の方であれば原則自然な懐妊が見込まれるため希望の方法で何度でもお手伝いすることが可能です。それ以上になると、俗にシリンジ法と呼ばれるICIでは可能性が低くなってきてしまいます。40歳までの方であれば5~6か月を自然な妊娠が期待できる目途としてそれ以上になる場合、人工授精・体外受精利用といったより可能性の高い方法を相談していくのが近道かと思います。40歳から42歳までの方であればもし自然に妊娠するようであれば3か月程度で懐妊する傾向が知られています。それ以上は基本的に体外受精が一番可能性の高い方法でしょう。お若いかたでなかなか懐妊に至らない場合も、基礎疾患の存在が考えられますので産婦人科での検査をお勧めしたいと思います。とはいえこれらはあくまで医学的な観点からの目安ですので、信頼関係が十分で意志も強く互いの都合がつくようであれば年齢に大きく拘らず長期にわたる提供も当然可能ですし実際に行っています。

また、無事ご懐妊・ご出産された場合はぜひご連絡いただければと思います。提供者としても提供に意義があったかはどうかは気になることです。お子様が成長された後に出自を知る機会を提供するために連絡可能な状態を維持するという意味でも重要かと思います。(精子提供によって出生した子孫とのかかわりについては以前のブログ内記事にてある程度詳しく記載しているので関心があればご一読ください)出生に至らなかった場合にも、今後の相談もあるかと思いますのでできればご連絡いただきたく思います。ですが、これらも依頼者様の希望によってドナーと接点を断つことが重要という考えも当然尊重いたします。その場合、その旨をお伝えいただいた上でそれ以降は連絡をいただかなくても構いません。