一回でうれしい結果となれば、これ以上のことはありません。ですが、一回の施行ごとの成功率は方法や年齢、精子の質に大きく依存してしまいます。精子の質については、精液1㎖あたり運動している精子2000万以上あれば妊娠率は高止まりとなり変わりませんが、提供者は運動精子が1㎖あたり5000万以上ありますのでこの点については問題ありません。シリンジ法では現実問題として30歳、35歳が一つの壁になってくるようです。20代であれば、以下の表にあるように20%を超えてきますが、30代ではそこから10%下がり、35歳を過ぎると5%前後といった成功率になってしまういます。

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Banerjee, K., & Singla, B. (2017). Pregnancy Outcome of Home Intravaginal Insemination in Couples with Unconsummated Marriage. Journal of human reproductive sciences, 10(4), 293-296.

 一方で病院利用の際に一般的な方法として、精子を直接子宮内に注入するIUIという方法があります。こちらはどの研究でも、35歳まで20%、40歳前後でも10%の成功率を維持できるものです。下のグラフ(青線が妊娠率、赤線が流産率です。)は厳しめの研究からとったものですが、40歳を過ぎても10%前後の成功率があるという点は注目できます。10回に一回は成功するということですから、40代前半であればIUIで試行する価値はあるかと思います。ですが、2~3回試行して成功しないということであれば、専門の医師に相談することも考慮する必要があるかもしれません。。

Effect of maternal and paternal age on pregnancy and miscarriage rates after intrauterine insemination, Stéphanie Belloc, Vol 17. No 3. 2008 392-397 Reproductive BioMedicine Online; www.rbmonline.com/Article/3526 on web 11 July 2008

 前回の投稿と合わせてまとめると、35歳を過ぎたあたりからある程度試行期間を設けて専門的な生殖補助医療を考える必要があるかもしれません。35歳から40歳までの場合は半年程度試行してもうまくいかない場合、40~42歳までは3か月試行してうまくいかない場合といったところが現実的な線ではないでしょうか。43歳を過ぎてしまうと、統計的に卵子の90%には何らかの染色体異常があり、ご自身の卵子で妊娠できる可能性自体10%以下しかありません。また無事出生に至る可能性についても上の赤線のように厳しくなってしまいます。最初から専門の医療機関に相談されることを強くお勧めいたします。44歳以降では、自分の卵子で身籠れる可能性は1%を遥かに割り込みほとんど奇跡的な数値になってしまいます。ご相談者様の年齢により、適切な方法を考えていただければと思います。もちろんご相談いただければ、当方も微力ながらお力になれればと思います。

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