前回の続きで、老化した卵胞ではなぜ妊娠が成立しにくいのか触れます。

 排卵の数日前から、一番成長のよい卵胞からの女性ホルモンであるエストロゲン分泌量が増えます。これは子宮頚管粘液の分泌を促進するので精子が子宮内に到達する可能性が増えます。しかし、老化した卵胞ではエストロゲンが十分分泌できないので若い卵胞ほどには頸管粘液は分泌させられません。

 そして、エストロゲンが十分増えると視床下部と脳下垂体が刺激されて黄体ホルモン(普通LHと呼びます。)が大量に分泌され、排卵に至ります。しかし、30代半ばから40代前半にかけてLHの分泌量も減るので、排卵検査薬では検知できないこともあります。若い方の場合LH大量分泌の前には頸管粘液が多いものですが、35歳以上の方では出たりなくなったりということに気づかれることもあるかもしれません。

 一旦排卵すると、卵胞は崩壊して黄体を作ります。黄体はプロゲステロンを分泌して子宮内膜に分泌期の変化をもたらすので、受精卵にとっては着床して栄養を得やすい環境を作ります。ところが、卵胞の質が低いと黄体も十分なプロゲステロンを分泌できないので、着床しても受精卵がなかなか生き延びにくくなってしまいます。さらに、老化した卵子は妊娠初期に異常分裂することもあり、せっかく着床まで至っても流産になってしまう可能性が上がってきてしまいます。IVFでは20代の着床は18%程度ですが、40歳を過ぎると2-6%前後になります。44歳以上で出産に至ったのは0%という報告もあります(Ron-El R, Raziel A, Strassburger D, Schachter M, Dasterstein E, Friedler S. Outcome of assisted reproductive technology in women over the age of 41. Fertil Steril 2000;74:471-475.)。

Pregnancy and miscarriage rates chart
紫:周期ごとの妊娠率(左の数字)、赤:流産率(右の数字)。30代半ば過ぎから数字の悪化が顕著になってきます。(https://www.carolinaconceptions.com/treatments/donor-and-gestational-carrier/using-an-egg-donor/

コメントを残す


The reCAPTCHA verification period has expired. Please reload the page.